少しでも効率的に暗記する
これを読んでいるあなたは、暗記を得意としているだろうか?苦手としているだろうか?
勉強をしていると、どの科目に関しても一定以上の暗記は要求されるものである。
歴史を筆頭に、理科でも公式や化学式が、英語なら英単語や熟語が、数学なら公式、国語にしてもある程度の語彙や言い回しを覚えておかねば読解できない文章も出てくるだろう。
日常生活や読書を通して覚えられることであれば問題ないのだが、試験を解くのに必要となる知識は大抵の場合、きちんと勉強して覚えなければいけないだろう。
必要となる知識は受験科目数によって増減するのだが、相応の大学試験に挑むのであれば、どう選択してもそれなりの暗記の必要は出てくるものである。
何度も書いたり読んだりするというスタンダートな方法も良いが、少し工夫し、方法を変えることで、記憶への定着は変わってくると言われている。
既知の内容も多いだろうが、もし知らなかった内容であれば、暗記する際に試してみてはいかがだろうか。
ひと手間加えて記憶に定着しやすくする
忘れないように復習する
まず始めに紹介したいのは、エビングハウスの忘却曲線である。
ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスが実験で導き出した結果を数値化したもので、どれだけの時間が経過するとどれだけ記憶から無くなるか、ということを数値化したグラフである。
その忘却曲線に対して、カナダのウォータールー大学はどのタイミングで勉強をすれば記憶が定着できるかを実験しており、それらを合わせたグラフが下図となっている。
単純に勉強を一回するだけでは、20分で半分近くの内容を忘れ、一週間後には四分の一以下の内容しか覚えておくことができない。
それに対し、24時間以内に10分、1週間以内に5分、1ヶ月後に2~4分、という間隔で復習を行うことで、記憶が100%に戻るということが実験結果として示されている。
よほど頭の良い人か、とてつもなく興味がある内容でなければ、一度読む、見るだけで覚えておくことは人の脳では出来ないようになっていることがよく分かる内容である。
復習しなければ忘れるのが当たり前だということをしっかり理解し、インプットとなる勉強とセットで、復習をする時間を設定するようにしよう。
音読する
人がいるところでは使えない手段では有るが、口に出すことは記憶の定着に大きな効果がある。
音読することで、脳がその情報を認識する回数が何倍にもなる。
読む、書くでは主に目から情報を認識するだけであるが、音読をする場合には目で見る、耳で聞く、口に出す、という3つの感覚で情報を認識することになるからである。
東北大学 川島隆太教授は、音読によって脳の活動が活発になり、記憶力があがるという実験結果を出しており、下の参考サイトにある画像では脳の活動範囲が大幅に増えていることがわかる。
https://www.hj.sanno.ac.jp/cp/feature/201911/08-02.html
耳栓やヘッドホンをつければ小さな声でも響いて認識しやすくなり、集中力も増して効果が増える、というような説などもあり、単純にして効果の大きい方法だ。
どういった状況で音読を活用するかにもよるが、自分の部屋で黙読するだけなのであれば、口に出しながら暗記を進めるのが良いだろう。
最高の暗記法は興味をもつこと
これはどこかの研究結果でも論文でもない、あくまで持論ではあるのだが、暗記するのに最も重要なことは、その対象に深い興味を抱けるかどうかであると言いたい。
特に古文漢文、歴史の学習をしていて度々実感したことではあるが、興味をもってストーリーを理解することで人物名や出来事がするすると頭に入ってくるのである。
これと同じ体験をしている受験生のインタビュー記事もあるのだが、彼も日本史を学習している際、面白い授業をしてくれる先生に出会い、歴史の流れを理解した上で個別の暗記を行うことで、劇的に理解や記憶が進んだ、という旨の話をしていた。
学習内容に対しての興味は恣意的に増減させることが出来ないので難しくはあるのだが、対象に興味をもてるよう、関連書籍を読んだり、より深く情報を求めてみたり、といったアプローチの方法も、個人的にはとても有用であると感じる。
もし全く共感できないようであれば、世界史の学習を単発で進めるよりも、三国志やベルサイユのバラなどの名作漫画を読みながらのほうが人名や出来事の理解や記憶が捗る、という感覚を思い浮かべてみて欲しい。
少しは納得していただけるのではないだろうか。
寝るときに記憶が定着する?
人間は寝ているときに記憶を整理する、という話を聞いたことはあるだろうか。
寝る直前の勉強が良い、寝る直前に考えたことは睡眠時に何度も脳で処理されて定着しやすくなる、寝ている最中の睡眠学習が容易、などという話も聞いたことがあるかもしれない。
わたしも、単純に寝る前の勉強が有用で、記憶をしっかり定着させるにはやはりきちんと睡眠をとるのが良い、と書こうとしていた。
しかし、睡眠に関しては思っている以上に解明されていないことが多い。
少し調べただけでも、きちんと睡眠をとったほうが良さげではあるが、単純にそれが記憶の定着に良い影響を与えているとは言えないようである(運動や楽器など、身体の動きに関しての記憶は寝るときに定着することがデータとして有意に示されているようだ)。
例えば徹夜をした場合など、きちんと勉強できるのであれば、全く勉強しないよりも試験で解ける問題は多くなるだろう。そういった局所的な話であれば睡眠をとるよりも徹夜したほうが成績が上がるとは言えるのだ。
ただ、睡眠がきちんと取れなければ、パフォーマンスは落ちていき、勉強し続けることはできないことも事実である。
そういった事実だけを考えるのであれば、「良いパフォーマンスを発揮する」という点に関しては質の良い睡眠が大切なのは間違いない。
記憶の定着という観点からは簡単に決着のつく問題ではないが、試験に合格するためにはきちんと睡眠をとって、良いパフォーマンスを出しながら勉強を進め、どのような状態でも試験で結果を出せるよう自分をブラッシュアップしていくのがベストであるとは言えるだろう。
そうは言っても量はやる必要もある
ここまで記憶の定着に関していくつか参考になりそうな事例を載せてきたが、そうはいっても結局は基となる勉強量が必要となってくる。
きちんと学習をし、その復習を「短く、何度も」行うことによって、記憶を定着させていくという基本的な形を忘れないでおこう。そのタイミングや方法に関してのアドバイスを載せたが、それさえやっていれば記憶がするすると入ってくるなどとは安易に考えず、地道な勉強を進めていかなければならない。
勉強は一日にしてならず、だ。
あくまで補助としてだが、暗記の参考になれば嬉しい。
編集後記
偉そうに暗記に関してのことを書いてみたのだが、かくいうわたしは暗記がかなり苦手だった。過去形で書いたものの、今でも苦手だ。攻殻機動隊のように、記憶を全部外部の記憶媒体に突っ込んで、都度取り出せるようにしたいと何度思ったことだろうか。
これが、自分の興味のある部分に関してはすらすら覚えられるのだから、人間の脳みそとは不思議なものである。小説などは一度読めば数ヶ月は間を開けてもあらすじくらいは覚えていて、続きから読み始めることができるのだから、本当にどんな差があることやら、と思ってしまう。
きっと、興味がある内容というのは自分が思っている以上に何度も何度も繰り返し思い出し、接し、深く読み込んでいるのであろう。
受験勉強であれば、大抵の場合はあまり興味のない内容を覚えなければいけないから、そういった劇的な暗記力を発揮するのは、どうにも難しそうである。
これが、大学生や社会人になっても、本当に興味のある勉強だけを続けていくのはほぼ無理といっても過言ではないので、多かれ少なかれ暗記しなければいけないことというのは出てくるものだ。
生きてるうちに外部記憶に頼ることは恐らく無理だろうので、頑張って、共に暗記していこう。