旧帝七大学レベルを目指す高校生へ – おすすめ科目と重要度 –
地方の進学校に通う学生に多い事例だが、親や学校の先生から「別にどの学部に行ってもいいけど、大学は地元の旧帝七大学にしてね」という類の圧力を、無言有言問わず受けているのではないだろうか。
もしくはあなた自身、将来の進路は決まっていないが、目指すのであれば旧帝七大学かな、と思っているかもしれない。
とはいえ、高校に入ったばかりの高1、あるいはまだ受験を身近に感じない高2の学生の中には、どの教科をどのくらい勉強すればいいのかわからないという人もいるだろう。
この記事では、まだ文理選択さえもしていないような迷える高校生に、どの教科をどのくらい勉強するべきかを紹介していきたい。
受験生になってから勉強に本腰を入れればいいかな、と考えている人にこそ参考にしてもらい、少しでも指針になれば幸いである。
おすすめ科目と重要度
英語(重要度★★★★★)
最も重要な科目は英語だ。
英語を制するものは受験を制すると言っても過言ではないだろう。
その理由は簡単で、文系理系、国立私立に関わらず、どの大学・学部においても必ず課される科目だからだ。
最近はTOEICやTOEFLなど外部試験の点数を活用できる事例も増えているが、これらの対策も含めて英語の勉強はほぼ間違いなく必須となってくる。
また、英語は大学ごとに特色が出やすい科目である。
東大のように比較的オーソドックスな出題をする大学もあれば、京大のようにとにかくハイレベルな和訳・英訳を求めてくる独特な大学もある。
私立においても、慶應は長文読解、早稲田は怪文書レベルの英語が出題されるなど、どの大学も特色のある手の混んだ出題をしてくる。
英語がある程度のレベルまで達していなければ、対策を立てると行った段階までたどり着くことは出来ない。それはつまり、難関校に挑戦できないのと同義である。
なにはともあれ、大学受験を目指すのであれば英語の勉強をしておくことは、受験における大きなストロングポイントになるだろう。
数学(重要度★★★★)
これまで様々な記事で数学の大切さを幾度となく説いてきた。
それだけ数学は非常に重要な科目だということだ。
これは、文系であろうが理系であろうが関係ない。
数学が苦手な人が多い、という意味では文系こそ数学を極めるべきである。そうすることで他の受験生との差別化ができ、大きく得点差をつけることができる。理系に進む場合には数学ができないとまずもってお話にならない。
数学と聞くだけで拒否反応を示す学生も多いが、そうなる前にまず数学というものに慣れていくことが重要だ。
数学にはタイプがいくつかあるが、大きく分けて計算系と解法パターン当てはめ系に分けられる。
計算系は、ともかく複雑で難解な計算を延々と求められるタイプの問題だ。
めんどくさいことこの上ないが、突き詰めれば四則計算に収束していくため、計算ルールさえ覚えれば誰でもできる。
この系統の問題が上手く解けないとなると、公式の理解や暗記が甘かったり、計算スピードや正確性に難があると考えられる。そういった場合は、公式の再確認や計算演習等を用いた量的な反復計算が必要となる。
一方、解法パターン当てはめ系は一見して難解な問題に見えて、有名な問題や頻出問題などの解法を当てはめることで解いていくことのできる問題だ。
この系統の問題には演習量や数学的なセンスが必要となる。というのも、どういった解法パターンを当てはめれば解けるかを見極めていく作業が必要となるからだ。
こうした問題をきっちりと解いて得点をもぎとるためには、問題演習量が物を言うことになる。演習を解き、解法パターンをストックしていくことで、難問を解くための取っ掛かりを得ることができるのだ。
詳細は科目別対策の記事に譲るが、いずれにせよ早い段階からしっかりと対策をしていれば恐るるに足りないはずだ。
国語(重要度★★★~★★★★★)
国語は感覚で解く、などと言っている学生を見かけることもあるが、国語という科目はおろそかにすることで別教科にすら影響を及ぼすほど、勉強の根幹となる科目である。
まず、どの科目に置いても問題文をきちんと理解できなければ問題を解くことができないということを覚えておいて欲しい。最低限の語彙力がなければ、問題を理解する、というスタート地点にすら立てないのだ。
そのため、常日頃から本を読んでいたり新聞を読んだりして語彙力に問題ある学生であれば重要度はそこまで高くないだろう。一方、問題文を瞬時に理解するのが怪しいレベルなのであれば、真っ先に対策を講じる必要があるほど重要である。
勉強の仕方がわからないという人は、とにかくふわっとした理解しかできていない単語の意味を捉えるところから始めよう。
例えば「抽象」という単語の意味をしっかりと答えられるだろうか?「恣意」は?「形而上」は?少し難しくなると説明しづらくなってくる単語もあるのではないだろうか。
こういった単語が英語の文章読解などで出てきたならば、読み下すにも日本語訳にも大きく関わってくる。わからない単語などは辞書、最低でもネットで調べて語彙をストックしていこう。
語彙力に問題は無いが、国語の得点が伸び悩んでいるのであれば、次は接続詞をよく理解して文章の要点を把握する訓練をしてみよう。それと共に、文章の要点を要約する訓練を行えば、国語の勉強としては効果が現れるだろう。
例えば、「つまり」の後には前の文章のまとめがくる、「しかし」の前後では主張が変わる、といった接続詞の効果を見極めることができれば、文章の要旨を掴みやすくなり、筆者の主張を浮き彫りにすることができるようになる。
また、文章の要約は英語の訳や日本史世界史の論述の際、端的に主張を伝えるために活きてくるテクニックだ。
この二点は少し意識するだけでも大きく変わってくるポイントである。
そのため、学習する時間をそこまでとれないという状況でも、問題演習とその復習時に意識して練習しておくだけでも変化が実感できるだろう。
国語の成績が伸びない、勉強方法がわからない、そして教科に関わらず設問の理解に躓くようなことがある場合には是非試してみて欲しい。
日本史/世界史(重要度★★★)
文系であろうと理系であろうと、共通テストで最低1科目は社会科目が課される。
(何故か学校で習わせるのに入試科目にはほぼ入ってこない公民はどんな立ち位置なんだと言いたくもなるが、まあそれは置いておいて)受験全体のスケジュールを考えた際、日本史か世界史を早い段階である程度準備しておけると、高3になった時に大いに楽ができる。
公民はせいぜい共通テストで課されるだけであり、日本史/世界史とは比べ物にならないほど分量が少ないため、高3からでも十分間に合う。しかし、文系であれば日本史/世界史は二次試験でも問われる科目であり、共通一次レベル以上の理解をしておかないといけない。
暗記量も多く、旧帝七大学レベルともなれば記述式の問題も出てくるため、単純に年号と重要用語だけ暗記しておけば得点ができるというものでもない。
歴史の流れや重要イベントの前後関係・背景など体系的な理解が必要となってくるため、早い時間から手をつけて暗記をできるだけ済ませておきたいところだ。その上で時系列に沿った縦の流れと、地域ごとの相互関係といった横の流れを把握していくことが重要になってくる。
化学(重要度★★★)
理系であれ文系であれ、国立大を目指すのであれば共通テストで理科を1科目選択することになる。文系であれば化学基礎、物理基礎などの「XX基礎」を2つ組み合わせることで、あわせ技で「理科」の要件を満たすこともできるが、何れにせよ理科は入試科目の一つだ。
理系であれば2科目受けることになるので、何はなくとも化学は勉強しておいたほうが良い。
何故かというと、「理科2科目」といった場合7割方が「物理/化学」、残る3割が「生物/化学」の組み合わせになるからだ。
極稀に「地学」を組み合わせる人もいるかもしれないが、私の人生で「物理/生物」の組み合わせをとっている人をみたことがない。まだ進路が十分に決まっていない場合であっても、化学は受験科目になる場合が多いので、しっかり勉強しておこう。
理科の勉強を大きく2つに分けると、計算系と暗記系に分けられる。
化学は計算系、暗記系ともに中程度求められるバランスの良い科目なので、好き嫌いなく対策が取れるだろう。
個人的な感想で行くと、物理は計算系重視、生物系は暗記系重視だ(地学も計算系、暗記系のバランスが良い科目だが、如何せん人気がない)。自らの適性に合う科目がわかっていたり、早くから進路がある程度決まっている場合には他科目でも良いが、まだであれば化学が無難と言えるだろう。
英語、数学、国語、日本史または世界史、化学。
この5科目をまずはしっかりと勉強していき、その後具体的な進路や志望校、志望学部を絞り込んでいく中で、残る必要科目を選んでいけば良い。
余力のある学生向け -相性の良い科目を組み合わせる-
これまで挙げてきた5科目は、あくまで標準的な学生を想定して書いてきた。
ここからはもう少し色を付けて、学生の特徴別に勉強しておくと良い科目の組み合わせを紹介したい。
組み合わせ1(数学/物理)
数学が得意な学生であれば、化学よりも物理のほうが恐らく理解が進みやすいだろう。
先述の通り、物理はどちらかというと計算系重視の科目だ。特に力学などに関しては、数学が得意であれば容易に理解できるはずだ。
そもそも物理現象の分析のために数学という学問が生まれたと言っても過言ではないため、逆を言えば数学ができれば物理は得意科目になるはずだ。力学は突き詰めれば「距離・速さ・時間」の問題であるため、数学の問題を解いているのと似た感覚で学べるはずだ。
組み合わせ2(理系/地理)
なんとなく自分は理系に行くだろうなと思う学生であれば、社会は地理が相性が良いだろう。
地理は世界史や日本史に比べて暗記要素が少なく、物事の仕組みや成り立ちの理解が求められる、理系的な考え方をすることの多い学問だ。
「XX造山帯の周りはマグマができやすく、したがって地震が起こりやすい。」、「◯◯気候の地域では△△農業が盛んで、これによって経済は◇◇の輸出が中心で~、」といったように、「AならばB、BならばC」という論理展開になるため、その流れで覚えていくと頭に入りやすい。
また、地理の一部には「地学では?」と思えるような部分もあるので、文理横断系の科目であるように思う。そういった意味でも、理系の学生にとって馴染みやすい科目だと言えよう。
組み合わせ3(文系/生物)
一方で自分はなんとなく文系だろうな、と思う場合には理科は生物を選ぶと良いだろう。
生物は、全く無いとは言えないが、計算的な要素が少ない。
少なくとも物理ほど高度なレベルを要求されず、どちらかというと暗記に傾倒している。
暗記においても、用語とその意味するところ、という形で理解を進めていくことが重要であり、繋がりを捉えていくという意味では歴史の勉強法に近いものを感じる。
メモリー・ツリーによる覚え方、とでも言うべきように、一つのキーワードを基に周辺知識を補完していき、お互いの関係性を把握していくのだ。
歴史と合わせて暗記量は増えるかもしれないが、計算部分にリソースを割かずに済む、と考えれば合理的な判断となるだろう。
自分にあった科目選択を
もちろん、理系でも日本史が好きだという人もいるだろうし、文系でも数学が得意という人もいるだろう。
そのため、一概にどれが絶対的に良いとは言えないが、自身の得意科目や得意分野をもとに科目選択をしていくと、効率的かつ効果的な勉強ができる。
そういった感覚を高1、高2の早い段階で掴んでおくことは、受験勉強に非常に役に立つ。
編集後記
おそらく今もそうだと思うが、私が通っていた頃、我が母校、東京都立日比谷高校は文理選択は高3になってからであった。高2までは全生徒が全科目を学ぶ、という方針をとっていたのである。
したがって、日比谷では全生徒が日本史、世界史、地理、政経、倫理、物理、化学、生物、地学、全てを学んだ。大学合格という意味合いだけで考えると、この日比谷高校の教育方針は正気の沙汰ではないが、天下の名門府立一中時代からの長い歴史の中で、「日比谷生たるもの全科目できて当たり前」というぶっ飛んだ価値観が今なお残るという意味ではなかなかに味わい深い。
理想は大いに素晴らしいものであるとはいえ、現実的にやはり大学受験においては、如何に限られたリソース(脳みその容量、時間、体力、お金など)を最大限に有効活用し、最高のパフォーマンス(志望校合格)を出すかということが重要となる。
そういった、自分の高校時代の反面教師というわけではないが、旧帝七大学レベルを志望する学生には戦略的、計画的に勉強をすることによって少しでも合格の可能性を上げてほしいと思ってこの記事を書いた。
理科社会の全科目をやるというのは流石に受験においては狂っているとしか言いようがない(笑)
しかし、私もすべての科目を少なくとも1年間学んできたことでこの記事を多角的な方面から考えて書くことができた。
したがって、全科目履修方針も決して悪いものではない、と最後に母校をフォローしておくことにしよう。
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