2022年 早稲田大学法学部英語 入試問題レビュー
早稲田と慶應、私立大学の双璧をなす存在として何かと比較される2校だが、入試問題の特徴は大きく異なる。とにかく長い英文の慶應、長くはないがとにかく文章が難しい早稲田、というのがわたしが認識している両校の大きな違いだ。
高校時代からそのような印象を抱いていたわたしの認識ではあるが、その考え方は今でも通用するようだ。
これから早慶の各学部の入試問題を解いていき、それぞれの特徴について深堀りしていきたいが、今回の法学部と前回の慶應経済の英文は、単純に難易度という意味では早稲田のほうが難しかったように感じた。
ただし、問われ方という意味では、慶應経済の問題形式が「普通」の入試問題化しているため、両校ともそこまで個性の違いがみられるものではなかったようにも感じる。
早稲田大学の入試問題を解くのは実に十数年ぶり、法学部の英語を解くのは人生で初めてであったが、毎度の通り時間通りに解き、大問別に考えていきたい。
大問1 長文読解
世間一般に認識されている「美人」の定義は、白人ブロンド女性を前提としていることに気づいた黒人の女性の手記、というような内容。
大筋の内容は読み取ることができるが、如何せん使われている単語が難しいために内容を完全に把握するのに苦労した。完璧に把握しきれていない、という不安のなかで問題を解くことになるわけだが、その反動か、問題全体でみるとそこまで難しくはなかった。
大問1に限った話ではないが、下線などが引かれていない部分からの出題も多く、問われている箇所を英文中から探すのに無駄に苦労した。こういう不親切なところが実に早稲田らしいと思う。
1(1)◯(2)✕(3)✕(4)◯(5)◯(6)◯(7)✕
2(1)✕(2)◯(3)◯(4)◯
3(1)◯
4(1)◯(2)◯(3)✕(4)◯(5)◯
大問2 長文読解
人間と違い、鳥は頭が悪いと思われているが、決してそんなことはない。
知られざる鳥の驚くべき能力を紹介する、といった感じの内容。
きちんと観たことはないが、ナショナル・ジオグラフィックを文章にまとめたらおそらくこのような感じになるのではないかと思う。
こちらに関しては内容もわかりやすいし、段落ごとに何が書かれているのかも明確なので、容易に取り組めた。それだけに、大事なポイントを読み落として最初の2問を落としたのがとても痛い。言い訳は総評に譲る。
最後の3問はアクセントの場所を当てる問題。
慶應経済にもあったが、今まで30年以上生きてきて、この問題形式だけは入試問題のなかに存在する意味が全く理解できない。
百歩譲って高校英語の教育の中で教えるのは良いとは思うが、人生を左右する大学入試において問うほどのものなのだろうか、毎回考えてしまう。と、いうことでこちらは見事に全滅した。
1(1)✕(2)✕(3)◯
2 ◯
3(1)◯(2)◯(3)◯
4(1)◯(2)◯(3)◯
5(1)✕(2)✕(3)✕
大問3 文法問題
driveの後に続く前置詞をひたすら入れていく問題。
こういう類の問題が、いかにも早稲田っぽいと感じて好ましい。
空欄7つで選択肢9つ、複数回答禁止となっている。
わたしは4問しか当たらなかったが、自信のあるものから埋めていき、残りは消去法でそれらしいものを入れていけば、少なくともこのくらいは当たるのではないだろうか。
(1)✕(2)◯(3)◯(4)✕(5)◯(6)✕(7)◯
大問4 単語挿入問題
こちらはよくある、短文の括弧内に入る適切な文言を考える問題。
ただし、選択するのは不適切なものなので、5つの選択肢のうち文法的に間違っているものを選ぶことになる。
どれもそれらしい感じの選択肢にみえるが、あとに続く前置詞が必要かどうかをみて、自動詞と他動詞の区別をつけることが正解を導くポイント。
それっぽく言ってはいるが、この解説で正しいのかいささか自信はない。
(1)◯(2)◯(3)◯(4)◯(5)✕
大問5 文法問題
文を読んで、その中に文法的な誤りがある箇所を指摘する問題。
「誤りなし」という選択肢もあるため、若干めんどくさい。
このあたりから残り時間が怪しくなってきたため、だいぶ焦りながらやっていた。
そのため、情けないところでミスり、失点してしまった。
(1)✕(2)✕(3)◯(4)◯
大問6 語句整序
1パラグラフの英文を読み、その中にある文の単語を整序する問題。
こちらもよくある問題で、とても懐かしく感じる。
こちらも時間が足りず駆け足で進めていたら、単語を一つ書き忘れるという凡ミスを犯してしまった。時間をかけてきちんとやってたら解けただろう。
なぜかglobalの単語を抜かすという凡ミスをし、「of」を2回使うというミスも犯していた。
(1)Two-thirds of the (global) population will have problems of accessing fresh water.
(2)✕
大問7 英作文
Piano is falling from the building and about to crash to the man standing on the street.
1コマ漫画のようなタッチの絵をみて、それに関する英文を書くという問題。
1パラグラフ書かなくてはいけないものの、一文書いたところでタイムアップだった。
内容自体はそこまで難しくはなかったので、時間があればそこそこのものは書けたであろうとは思った。
総括 早稲田大学法学部 英語対策
慶應は英文は長いが単語はそこまで難しくないのに対し、早稲田は英文は短いが単語が難しい。したがって、出題の仕方や難易度は両校そこまで変わらないが、とりあえず読み切れさえすればそこそこ自信を持って解答できる慶應に対して、内容の理解度70%くらいで問題に臨まなくてはならないのが早稲田の英語だ。
2校のこの大きな特徴の違いは、わたしが受験生だったときと大きく変わらないように思う。
河合塾では、早稲田の英文対策として「大学入試レベル以上の語彙力を身につけると良い」とアドバイスされているが、個人的にはそこまで語彙力に時間をかける必要はないように思う。
受験レベルの語彙力さえあれば、後は前後の文章から推察することができるし、内容を100%把握していないと解けないような読解問題も少ない。あったとしてもせいぜい1~2問だろう。
もちろん、チャレンジングな受験をしているのであれば、最後は1~2問の正誤が合否を分けることになるだろう。しかし、そのために貴重な受験勉強時間の多くを語彙力養成に充てるのはいささかコスパが悪いように思う。ここで言う「受験レベルの語彙力」とは、早慶に立ち向かえるだけの最高水準であることは言うまでもないのだが、そのレベルまで到達しているのであれば、苦手教科の克服や、得意教科の一層の強化などに時間を使うべきだろう。
慶應経済が、時事ネタ+経済学の要素をブレンドしたような英文をあえて問題文としてピックアップする姿勢が明白なのに対し、早稲田法学部にはそういった、学部と関連のある文章というのは今回見受けられなかった。
大問1がジェンダー論、社会通念的な問題を取り上げ、大問2が鳥の生態に関する文章、ということから察するに、人文科学・社会科学のテーマと自然科学のテーマがそれぞれ1問ずつ問われると考えられる。
早稲田を受けるレベルの受験生であれば、共通テストで5教科7科目を受けている人が多いと思うのでそこまで心配いらないが、「文系だから理系分野のことは何もわからなくても大丈夫」と安易に考え、自然科学分野に関して一切の関心を示さなかったり、拒否反応さえ示していたりすると、そういった分野の文章が出たとき、実態以上に難しく感じてしまう可能性がある。事実、今回で言えば鳥の生態に関する文章のほうが、内容が容易であった。
文系だから、理系だからというような興味・関心の境界線を自分で引くのではなく、広くアンテナを張り、貪欲に物事を知ろうとする知的好奇心を持つこと。これは単に受験対策という意味ではなく、大学生になっても持っておくべき心構えである。
学力をつける、ということと並んで、知識・教養を広げていくことも大切な要素である。
編集後記
学ばない男で大変恐縮なのだが、慶応経済のときに後悔したにもかかわらず、今回も印刷代をケチってタブレット上で解いたところ、非常にやりにくかった。
前述の通り、下線部などが全く引かれていない単語の意味を答えよ、といったような不親切な問題も散見されたため、なおさらタブレットでやるべきではなかった。
早稲田大学 過去の入試問題(なお2022法学部はURLなし)