英語 – 英単語学習の重要性 –
別の記事で、文系だろうと理系だろうと英語が大学受験において最も重要な科目であるという話をした。
ではこの、英語という最重要教科をどのように勉強していけばいいのだろうか。
今回の記事では、独断と偏見であるがわたしの英語学習方法について書いていく。
なお、難関国立大学が課すような英作文に関する解説は別の記事に譲る。
英文法と英単語
英語の勉強は、大別して英文法と英単語の2つが挙げられる。
どちらも大事であることは間違いないが、より重要なのはどちらかというと、圧倒的に英単語の学習のほうが大事である。
その理由は簡単で、受験校が上位になればなるほど文法問題は減り、長文読解問題のウェイトが増すからだ。
上位校になるほど文法問題は減る
多くの私立大学では、短文の英語を読ませて穴埋め4択問題を出す、といった問題が散見される。このような穴埋め問題は概ね英文法の知識が問われていることが多い。例えば、空欄にはto不定詞を使うべきなのか、ing動名詞を使うべきなのか、といったように文法知識が問われることがほとんどだ。
中堅私立大学よりも下となると、驚くことにこういった穴埋め問題だけで試験が出来上がっている場合もあるが、上位に行くほど長文読解問題が大勢を占めるようになる。
慶應などは長文読解問題ばかりを課すことで有名だ。
さてそうなってくると、当然ある程度の英単語を覚えていないとそもそも文章の内容を理解することができない。すなわち長文読解問題に太刀打ちできないということになる。
英単語がわからなければ問題が解けない
卑近な例で恐縮だが、”I am running a business”という英文の意味を考えてみよう。
英文法的な見地にたって考えてみたパターンを想像すると、このような感じだろうか。
「私はビジネスに向かって走っている」?それだったらbusinessじゃなくてofficeとかbuilidingとかを使うのでは?でもrunningだし…走っているとなるとbusinessは会社とか職場って意味なになるのか?でもそれだと、”running to”になる?うーんよくわからん。
上のような思考に陥らないためには、”run a business”ときた場合、”run”は「走る」という意味ではなく、「経営している、営んでいる」という意味である、という英単語の意味を知っているかどうか、がほぼ全てとなる。ここでは、英単語さえわかっていれば、すんなりと「私は事業を営んでいる」と和訳することができる。
これはほんの一例であるが、長文読解とは突き詰めればこのような英文の連続体のことなのだ。
”I am running a business”の”running”が動名詞なのか、動詞の現在進行形なのかは正直言ってどうでもよく、またこの文章全体がSVOなのかSVOCなのか、目的語がなにで、主語がこれで、述語があれで、などと態々分解して考えることは全く意味がない。
時間が限られた試験のなかで、時に数ページにもおよぶ長文読解で一文一文分解していたら、それだけで時間がオーバーしてしまうだろう。ぱっと一読しただけで、少なくともなんとなくでも内容が頭に入るようでなければ、読解問題は解けない。
そういう意味でわたしは、英単語絶対主義者としての立場をとっている。
コツコツと英単語を覚える
人間は、一度覚えたことを驚くべきスピードで忘れていく。
物事を脳みそに定着させるには、ある程度の期間に渡って反復練習をすることが重要だ。そういった意味で、暗記に勉強時間を割いてもすぐには実力に結びつかないものである。
英単語帳を買ってきて1周勉強してみたが、終わる頃にはほとんど忘れていた、という経験はないだろうか?これは英単語帳自体やあなたの記憶力が悪いのではなく、学習の仕方がそもそも間違っているのだ。
忘却曲線を意識した階段式英単語記憶法
ここで、わたしが高校時代に編み出した階段式英単語記憶法を伝授しよう。
当時は忘却曲線という言葉も、そもそもこのような研究がなされている事自体も知らなかった。しかし、一度覚えた英単語を次の日には驚くほど忘れていた、という経験を積み重ね、実体験として「暗記と一定期間後の定着率の悪さ」は認識していたように思える。その時に編み出した記憶法である。
オススメの単語帳は「Z会 速読英単語」
わたしが使っていた単語帳は、風早寛氏の「Z会 速読英単語」だ。
これは非常に有用な英単語で、おすすめの英語教材を聞かれたら真っ先に挙げるものの一つに入る。(ちなみに、現時点ではこの記事のサイトのリンクから英単語帳を買ったとしてもわたしには1円も入らないので安心してほしい)
この英単語帳の良いところは、ただ英単語がつらつらと掲載されているのではなく、半ページほどの英文が記載されているところだ。
英文内に登場する英単語を解説する、という形式になっているため、この英単語帳に取り組むことで
- 英文を読む(読解力練習)
- 次ページにある和訳分を読む(読解した内容との答え合わせ)
- 英単語の学習
これらを一度にこなすことができる。
1単元の中で解説される英単語は20個程度なので、毎日コツコツ覚えていくのに無理のない量である点も使いやすい。
おすすめの単語帳を載せたので、続いては具体的に階段式英単語記憶法のやり方を書いていこう。もし別の良い単語帳があればそれを使ってくれて構わないが、単元ごとにある程度まとまった分量があることが望ましい。
ノルマ設定と反復学習
はじめにやることは、一日あたりのノルマを設定することだ。
前述の速読英単語でいえば、1単元で20個ほどの英単語を覚えることになる。そして、一回あたりの学習単位を1単元としたとき、1日何単元こなしていくのかを設定する。
その設定の際、必ず過去単元の復習をノルマに組み込んでいこう。
復習に関しても一度で終わるのではなく、数日にわたって反復学習するようノルマを設定していく。
1日目:1単元
2日目:前日の1単元と当日の1単元、計2単元
3日目:前々日の1単元目、前日の1単元、当日の1単元で計3単元
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といった具合に、階段式にこれまでやってきた単元と当日のノルマの単元をやっていくのだ。
もちろん、これでは延々と学習量が増えていき、毎日単語帳を一周するはめになってしまう。
そのため、反復学習の単元は、三日目を目処に卒業していこう。
スポンジのように何でも吸収できる皆さんの脳みそであれば(そして先の忘却曲線を思い出していただければ)、3日目ともなれば1日目の単元はもう諳んじることができるようになっているはずだ。
つっかえることなく全問正解することができたら、その単元は卒業したと捉え、4日目には、2単元目、3単元目、4単元目と3単元だけをやれば良くなる。
日別の1日にやる単元数をグラフ化すると下のようなイメージになる。
復習の理解度に合わせてペース調整する
ご覧いただける通り、階段式英単語記憶法で最も楽なのは1日目だ。
2日目以降は過去分が乗ってくるので、常に複数単元(復習1~3、新規1単元)に取り組むことになる。単元によって、すんなり全問正解することもあれば、なかなか覚えられずにズルズルと復習する単元が増えていってしまう場合もあるだろう。
わたしの経験では、4単元まで溜まってしまったら、そこで一旦先に進むのを止めておくことにしていた。あまりに復習する単元が増えていってしまうと学習ペース、モチベーション、効率に関わってくる。そういった場合には、まずは復習3単元をしっかりと記憶するほうに力をいれよう。
もしそれでも単元の復習が終わらないのであれば、ペースが早すぎるか、学習に充てる時間が短すぎる可能性が高い。その場合には、ノルマを決めていたとしても一度立ち止まってみよう。
目標は、あくまでしっかりと英単語を覚えることにある。
ペースが早ければいいというものでは決してないのだから、時間をとって学習することを恐れないでおこう。ノルマはあくまで目安のようなものだ。
覚えにくかった単語は、しっかりと抑えることが出来れば大きなプラスになる。
そういった単語だけを別に控えておいて、スキマ時間に目を通すようにすれば、苦手な部分がどんどん無くなっていくだろう。そういった工夫も含めて、頭に入りづらかった単元の学習時間を確保し、確実に進めていこう。
英文が載っている単語帳を選ぼう
めくってもめくっても、ただひたすら英単語が羅列してあるだけの英単語帳だとノルマの設定が難しい。1日20個覚えるぞ、というペースを設定したとしても、あまりに単調ですぐ飽きるか、集中できない。
速読英単語(のみならず、英文が載っている単語帳)の良いところは、単語学習を通じて難関大学の英語試験に必要な技能を養うことができることだ。
英文読解、音読によるスピーキング・リスニングの練習、自分の頭で英文を読みながら和訳した後に単語帳に記載のある和訳文を読んで自身の和訳との比較や内容把握の練習にする、等と活用方法は多岐に渡る。
また英文自体の内容も、実際の入試問題によく出る内容であることが多く、総じて学習効果が高い。時事問題系のテーマも多いので、読み物としても面白いため、そういった意味でも学習を飽きさせない工夫が随所になされている。
速読英単語である必要はないが、本屋でパラパラとページを捲りながら、使える単語帳なのかどうかを吟味して欲しい。
単なる単語の羅列本なのか、英文の記載があるのか。
レイアウトは見やすいか。
主な意味だけしか記載されていないのか、類語や派生語などの追加情報の説明があるのか。
ごちゃごちゃしすぎているのも使いにくいが、「run=走る」としか記載のないような英単語帳では難関大の英語に対応することができない。
最重要科目の英語、その学習の根幹を担う単語学習、その相棒たる単語帳なのだ。
少しでも有用で自身のフィーリングにあった単語帳を選ぼう。
英文法の勉強は長文読解の副産物
ここまでは、英単語の重要性とその勉強法について書いてきた。
英単語が分かれば英文読解はできる、というのがわたしの持論ではあるが、もちろん最低限の英文法の知識は必要だ。
「動詞の語尾に“ed”をつけたら過去形になる」とか「have +過去分詞で現在完了になる」といった中学生レベルのことが理解できなければ、当たり前だが英文は読めない。
逆を言えば中学生の英文法知識があれば多くの英文は読めるし、英文読解問題は解けるのだ。
なかには、わけがわからない複雑な英文もあるし、更に言うと怪文書のようなものもある。
そういったものをきっちりと解くためには、もう少し構文知識が必要ではある。ただ、こういった知識は、英文読解を通じて学んでいけば良い。
結局のところ、難解な文法知識が必要な問題であっても、実際に英文に触れないと勝手がわからず終わることがほとんどだ。そういう意味で言えば、英文法の勉強は長文読解をしながら行うことができる。
文法書のように、文法的見地からメスが入りまくった一文を読むよりも、長文読解の生きた文章と対峙する中で構文や意味の切れ目を把握していくほうが、余程身につくように思えてならない。
赤本や長文読解の問題集で演習を繰り返し、解説に書いてある英文法の説明を読みながら、理解を深めていくほうが、受験英語レベルの文法を効率よく学習していけると思う。
もちろん、志望校でどのレベルの文法知識を求められるかは変わってくるのだが、基本的なスタンスとして、単語を学習し、読解演習を通じて文法を抑えていくのが、わたしのオススメの学習方針である。
編集後記
わたしは、7歳から10歳までアメリカで暮らした経験のある帰国子女だ。
英語は得意科目である。
英語が得意であることに不都合はないのだが、ただ「帰国子女」というだけで、「英語ができていいですね」「英語ができない人の気持ちはわからないでしょうね」といったことを言われ続け、なんならおっさんになった今でも言われる。
こういうことを言われるたびに、どうしても「あなたの日本語力は7歳から10歳の3年間だけで養われたのですか?」と言いたくなる。たしかに、わたしは人生の早い時期に英語に触れることができたのだが、一方で同じ時期に母国語に触れる機会を失っているのだ。
嫌味ったらしく帰国子女のこと弄ってくる相手には「あなたよりも国語の点数もいいですよ。なぜでしょうね?」と嫌味の一つも返したくなってしまう。
まあ、そういった僻みったらしく人の努力をバカにするような相手はどうでもいいのだが、ここで言いたいのは、帰国子女での経験値と英語知識など、大学受験ではほとんど意味をなさなかった、ということだ。
少し考えてもらうとわかるのだが、7歳から10歳に学ぶ日本語の知識では、大学入試の国語が解けないのと同じ理屈だ。
英語が得意科目なのは、特に大学受験でめちゃくちゃに英語の勉強をしたからだ。
更にその後も、大学時代の交換留学、大学院留学とかなりの時間を割いて勉強をした。
今回書いた英単語の勉強も、試行錯誤しながら自分なりに見つけ出した方法だ。
忘却曲線なんて難しい言葉を当時は知りもしなかったが、結果として忘却曲線を意識した勉強法を自分で編み出していた。
勉強は費やした分だけ伸びるものだ。
自分も帰国子女だったら、とか親が外国人だったら、なんて今更どうしようもないことに気を揉む暇があったら、今できることに全力をかけよう。
7歳から10歳までに身に着けた英語力なぞ、ちゃんと勉強すれば一瞬で追い越せるのだ。
曲がりなりにもきみたちの先を歩き、英語を学習し続けたものの言葉として、これらの学習方針や学習方法が活用されると、嬉しく思う。