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2021/10/30 2022/07/11

過去問を解く際の注意点と効果的な学習法

過去問を解く際の注意点と効果的な学習法

前回記事「受験スケジュール 秋の過ごし方」で、直前期は何かとやることが増え十分な時間がとれなくなってしまうため、秋ごろに過去問を解いておく必要性を説いた。

本記事はその過去問に関しての補足記事となる。

過去問に取り組む際の考え方から具体的な過去問の解き方まで解説していく。

過去問を過度に恐れない

秋の過ごし方記事でも書いたとおり、過去問は秋頃から取り組み始めたほうが良い。

直前期には時間が足りなくなってしまい、結果過去問対策に十分な時間を確保できなくなってしまえば本末転倒だからだ。

ただ、中には過去問を早い時期に解くことに抵抗がある人もいるだろう。
そういった人は大体の場合「思うように良い点が取れなくて自信をなくしてしまうのでは」という不安をもっていると思われる。

しかし、過去問を恐れて手を付けないほうが遥かに問題だ。
どう考えても、直前期まで全く過去問に手を付けず、解けるかどうかわからない状態でいる方が精神衛生上よくないだろう。その上、受験戦略的な方向転換もしづらくなる。もし過去問に挑戦した時点であまりにも解けなかったら(あるいは自分との相性が悪ければ)、志望校や志望学部を見直す必要がある。

早い内に過去問から自分の実力を把握しておくことで、併願パターンを変えたり、滑り止め校を増やしたりといった対応がとれる。その後の行動を修正・改善するのに役立ち、精神的に余裕を持って受験シーズンに突入することができるようになるだろう。

何より覚えていてほしいことは、実際の試験は満点を取らなくても受かるということだ。

大体の大学入試において、65%~70%の得点を取ることができれば合格圏内といえる。

 例:慶應大学商学部A方式

あくまで個人的な感覚にはなるのだが、秋頃に過去問を解いてみて、結果50%~60%程度取ることができれば十分良いペースで勉強ができていると言ってもよいだろう。配点にもよるので簡単には言えないところでもあるが、秋の時点では2問に1問正解すれば良いと思えば気持ちも楽になる。

秋から冬にかけて実力を伸ばし、3問中2問、4問中3問、と直前期にかけて正答率を上げていくように勉強を続けることができれば、勉強の方向性を間違えていない、実力がちゃんと付いてきている、良い結果に繋がる可能性が高まっている、と判断できるわけだ。

逆に、もし過去問で安定して高得点を取れる実力がついているのであれば、志望校や併願校のレベルを上げても良いかもしれない。その場合には、無駄な滑り止め校の受験を取りやめて、本命用の勉強時間に充てるというのも戦略としてアリだと言える。

受験は体力勝負の側面も確実に存在する。

休養と勉強のバランスを考えた時に最適な併願パターンを組めるよう、自分のレベルと過去問のレベルを知っておくのは非常に重要である。

過去問を遠ざけること無く、うまく活用していこう。

過去問を解く上でたった1つ注意するべきこと

続いて、具体的な過去問の解き方に関しても解説しておこう。

といっても、特別なテクニック等の解説をするわけではない。

赤本を買ってきてそれを解いていく際に、一点注意してもらいたいという話だ。

それは、大問ごとに刻んで解くのではなくしっかりと時間を測って通しで1年分解くべきということだ。その理由を説明していこう。

鍛えるべきは「試験力」

試験を大問ごとに小間切れにしてしまうと、試験時間内に解く、という意識が軽薄になってしまい、実践感覚をつかむことが出来ない。

大学受験は「どれだけ難しい問題が解けるか」という判断をするためのものと勘違いしている人も中にはいるかもしれないが、本当に問われる能力は「どれだけ早く、正確に難しい問題を解くことができるか」という部分なのである。

ある程度高い能力をもった人であれば、時間をかければほとんどの問題を解くことができるだろう。

そういったレベルの人が集ったとき、その合否の分かれ目はどこなのか。
それは「どれだけ早く、正確に難しい問題を解くことができるか」ということなのだ。本番同様の時間設定で挑戦することで、実際に問われる能力が発揮できているのかを判断できるようになる、というわけだ。

さらに過去問を通しで解くことで

  • 「どの問題から手を付けるべきか」という優先順位付けの能力
  • 「どの程度の時間で解くことができるか」という判断力時間配分力
  • 「これ以上時間をかけても解けない、一旦切り上げよう」といった判断を瞬時に下す対応力

なども同時に鍛えることができる。

試験内容や科目の勉強という以外にも、実戦形式で解くことによって養われるいわば「試験力」のようなものがあるのだ。

赤本が分厚いとはいえ、収録されている問題は無限ではない。
初見の問題を制限時間付きで解くことができる、という絶好の機会を不意にしないためにも、通しで解くことをおすすめしたい理由がここにある。

過去問を通しで解くのは疲れる?

「過去問を通しで解くと、疲れてしまってその後の勉強に支障をきたしてしまう」という声もよく聞く。

しかし、まさにその「疲れた中で勉強をする」という経験こそが、試験力を鍛える上で重要とも言える。

入試は長丁場だ。常に100%の体力・気力で試験に臨めるわけではない。

万全の状態で挑めるのは、せいぜい最初の科目だけではないだろうか。

インターバルとしてしっかり休憩できるのは、各科目の間にある休憩時間だけ。

後の科目になるほど消耗した状態で試験を受けることになり、不安や懸念が積み重なっていくことで、目の前の科目に集中できなくなる事もあるかもしれない。

常に万全の状況で小間切れの大問を少しずつ解くという練習をしても、実践感覚は身につかない。心身ともに疲弊した状態でも、合格に必要なだけのパフォーマンスを発揮させる、という練習を行う場として過去問を有効利用することが大切だ。

通しで過去問を解き、その後しっかり時間をかけて復習をする。

そういう勉強が余裕をもってできるよう、再三おすすめしている秋というタイミングで、しっかり時間を確保して過去問に挑戦してみるといいだろう。

過去問演習で鍛えられるもうひとつの試験力

ケアレスミスの本質

きちんと勉強して実力もあるはずのに、なぜか試験になると高得点につながらないという人はいないだろうか。模試や学校の定期試験などで思うように得点ができないという人は多いのではないだろうか。

そういった人は大抵、ケアレスミスで問題を落とし、結果として得点に結びつけることができていない。

模試でケアレスミスをするのはまだ笑って済ませることができるかもしれないが、本番でのケアレスミスは合否を大きく左右する要因になりうる。1年間の努力が水の泡となってしまうのだ。決して軽くみてはいけない。

ケアレスミスとは文字通りCareless、つまり「不注意のミス」ということだ。

ただ、この「不注意のミス」を単なる一過性のミスとして捉えるべきではない。

試験や模試においてケアレスミスを連発してしまう大きな原因は「緊張している」あるいは「焦っている」からだ。

 

緊張状態、あるいは焦燥状態に陥っている人は、どれだけ注意をしていてもミスをしてしまう。これは問題文の読み間違いや早とちりといったケアレスミスと同列にしておいて良い問題ではない。

このような「緊張」や「焦燥」を普段の勉強で演出するのは難しい。

慣れ親しんだ図書館の自習スペース、リラックスできる塾の快適な自習室。本番の状況とはおよそ対局にあるような快適空間での勉強に慣れてしまっているせいで、いざ模試や試験となると、過剰な緊張や焦燥に襲われることになってしまう。

過去問演習で「緊張」や「焦燥」を演出する

本番で晒されることになる「緊張」や「焦燥」を体感し、慣れていくためには、模試ももちろんのこと、やはり自身で数をこなせる過去問が重要になってくる。

問題集やテキストに載っている有象無象の問題を解くのとはわけが違う。

実際に過去に出題された問題を解く、これにより本番さながらの「緊張感」というものを仮体験することができる。

さらに、きちんと制限時間を設定して問題を解くことで、タイムプレッシャーからくる「焦燥感」の演出もすることができる。「限られた時間内に早く正確に解かなくては」という意識が焦燥感を強制的に高めるのだ。

いつもの快適状態を実践状態に追いやることが、過去問演習の真の目的というわけだ。

実践状態により鍛えられる試験力こそ、本番でパフォーマンスを発揮しきる上での最高の武器になる。

おまけ:泉式過去問演習法

最後に、「緊張状態」や「焦燥状態」を最大限に高めたいというドM(もしくは自分にドS)な人におすすめの過去問演習方法を教えよう。これは、本番に弱いという自分を鍛え直すという意味でも十分な効果を発揮する。

泉式追い込み過去問演習法

・苦手科目の試験を用意する

・試験時間をわざとマイナス5分~10分して解く

以上だ。

「緊張して時間が足りなかった」というのは良く聞く反省の弁だ。

で、あるならば練習の段階から時間が足りない状態を仮体験しようという演習法である。物理的に時間が短くなるのだから、感覚的に短く感じるよりもよほど正確に時間がたりなくなるだろう。

アレンジ方法としては、マイナス何分よりも、試験時間の○○%で解くという方法もおすすめだ。例えば120分の試験であれば、本番の90%、つまり108分で解いてみる、といった具合である。

あえて本番さながらの「緊張」や「焦燥」に追いこむことで、本番においてもベストのパフォーマンスが発揮できるよう鍛えていくことが出来る。

問題が解けるというのは合格の前提条件である。

そこから更に受かることのできる自分を作り上げていくには、こういったちょっとした工夫で本番を見据えた学習をすすめていくことが必要になるだろう。

良さそうだ、と思ったら是非試してみて欲しい。繰り返しになるが、秋頃というのはこういう練習をするのにちょうどよいタイミングだ。

編集後記

本記事では過去問を通しで解くことの利点を説明してきた。

言葉を尽くして冬前の過去問演習のメリットを解説したつもりだが、これを読んだ上でもまだ過去問は直前まで解かない、という人もいるかもしれない。

名前も顔も知らない人が書いている記事よりも、学校や塾の信頼している人のいうことに従う!という場合も多いだろう。

確かに、勉強のスタイルは人それぞれ違っているし、自分の信じる方法でやるのが一番だ。本来であれば決して押し付けたり無理強いすることはしないのだが、もう一押しだけさせてほしい。

自分の受験校の過去問を早くから解くことに抵抗感がある人でも、是非早いうちに「自分が受けない大学や学部」の過去問を解いてみてほしい。

例えば慶應志望であれば早稲田の似た学部の過去問を、早稲田の商学志望であれば法学部などの過去問を解いてみる、といった形だ。

学部や大学によって出題形式は大きく異なるが、それでも難易度はある程度似通ってくる。そのため、実践感覚という点では十分有用な経験を得ることができるだろう。

国立大学の場合はせいぜいが理系と文系という分け方しかないため、受験学部以外の過去問を解くというのは難しくなってしまうが、例えば北大受験生は東北大を受けてみる、といった同レベル帯の大学群の過去問を受けてみるというのは、大きな価値がある。

 

旧帝国七大学や早慶上智、MARCH、関関同立など、ある程度レベルが同じとされている大学のくくりが存在しているため、そういったくくりも参考にして探してみて欲しい。

過去問演習の狙いは勉強の一環というのもあるが、前述の通り実践感覚の養成だ。

本番さながらの「緊張状態」や「焦燥状態」を最大限に味わうのに過去問演習は非常に適している。

編集後記というわりには押し付けがましいかもしれないが、頑張っている受験生には、是非そこから一歩進んで、問題を解く以外の能力も伸ばしていって欲しい、と切に願っている。

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