資格目線で考える大学受験
大学進学、と一言にいっても大学に入りたい理由は人それぞれだろう。
真っ先にあがる理由としては良い企業への就職の足がかり、専門的な勉強をすることができる、といったことだろうが、働くだけなら高卒でも中卒でも可能だ(平均すると生涯賃金に大きく差がでる、などともよく言われるが、細かいことは割愛する)。
師事したい教授が在籍している、専門的な設備が揃っている、といった理由からも大学を目指す人もいるだろうが、入学前からそこまで突き詰めて進学先を決める人は少数派に思える。
そんな中、大学にいかなくてはならない要素として、大卒が条件となる資格や試験が挙げられる。本記事では、大学に通わないと取得ができない資格や受けることのできない試験を紹介していく。
大学に通わないと取得が困難になる資格に関しては別記事にて紹介しよう。
大学への進学が必須となる資格
医師
医師になるには、国家試験である「医師国家試験」に受かる必要がある。
その受験資格に「大学において、医学の正規の課程を修めて卒業した者」と規定されているため、医学部がある大学への進学が必須となる。
e-Gov(政府が運営する行政情報のポータルサイト)「医師法(昭和二十三年法律第二百一号) 第三章 試験 第十一条」
これは歯科医師(歯科医師国家試験)、獣医師(獣医師国家試験)も同様であり、それぞれ「歯科医師法(昭和二十三年法律第二百二号)」と「獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)」にてそれぞれ定められている。
医師国家試験予備試験とは、外国において医学校を卒業あるいは医師免許を取得した人が、日本で医師国家試験を受験するために必要となる認定試験だ。海外で医師免許を取得する場合にも海外の医学部へと入学する必要があるため、どちらにしても大学進学が必須となる。
薬剤師
薬剤師になるにも、医師になるのと同様に国家資格が必要であり、試験を受けるためには大学で薬学の正規課程を受ける必要がある。
厚生労働省「薬剤師国家資格」
1、2に関しては医師国家資格と同様に、日本国内あるいは外国の大学において薬学課程を修めたものを条件としている。3に関しても、薬剤師法が刷新された際に古い法の条件でそれまで薬剤師であったものも認める、というもので、どちらにしても薬科が存在する大学に入学する必要がある。
国家公務員総合職試験、一般職試験(大卒程度試験)
総合職とは、端的に言うと官僚(中央省庁に勤めている偉い人)のこと。
総合職試験は大卒以上、また一般職でも大卒かどうかで試験がわかれており、大卒以外に関しては高卒者試験や社会人試験、専門職試験などを受けることになる。
大卒程度試験では一般教養と論文以外にも専門試験が追加されるため、試験内容のボリュームが大幅に増え、難易度があがり、その分初任給が高くなっている。
同様の形式で、裁判所職員の試験や警視庁警官の試験などにも大卒程度という区分があるため、こちらを受けるためには大卒が必須となる。
自衛官幹部候補生
自衛官幹部候補生は、幹部自衛官を養成するための制度だ。
採用と同時に陸上・海上・航空の各自衛隊曹長に任命され、幹部候補生として一定期間の教育を受けた後、一般幹部候補生は3等陸・海・空尉(院卒者試験合格者は2等陸・海・空尉)に昇任、歯科・薬剤科幹部候補生は2等陸・海・空尉に昇任、幹部自衛官となる。
なお、防衛大学校を卒業した場合にも同様に幹部候補生学校に入校する。
自衛隊幹部候補生 自衛隊幹部候補生とは
応募資格が大卒になっているため、試験を受けるためには大学入学が必須となる。
なお、自衛官幹部に関しては一般曹候補生に入隊し、3等陸・海・空曹に昇任後、4年で幹部候補生部内選抜試験の受験資格が得られ、これに合格すれば幹部に昇任することもできる。
一般曹候補生は、18歳以上33歳未満と応募資格年齢を広くとっているため、高校新卒者から高専卒、大卒、社会人経験者まで入隊することができる。
一般曹候補生 一般曹候補生とは
教員
教員となるには、各都道府県における教員採用試験に合格しなければならない。
教員採用試験を受けるためには各種免許状が必要となり、これには取得したい免許状に対応した教職課程のある大学・短期大学等に入学し、法令で定められた科目及び単位を修得して卒業した後、各都道府県教育委員会に教員免許状の授与申請を行う必要がある。
令和4年度 東京都公立学校 教員採用候補者選考(5 年度採用)実施要綱
また、免許状にも普通免許状、特別免許状、臨時免許状と種類がある。
一般的な方法で取得可能となる普通免許状も、専修免許状(大学院修了相当)、一種免許状(大学卒業相当)、二種免許状(短期大学卒業相当)とわかれており、一種以上を取得するためには4年制の大学への進学が必須となる。
番外編
宇宙飛行士
宇宙飛行士になるには、宇宙飛行士候補者選抜試験を受験し合格する必要がある。いままで日本ではこの受験資格に大卒が入っていた。
しかし、じつに13年ぶりに実施された2021年度の募集要項にはその条件が記載されておらず、条件は「3年以上の実務経験、医学的適正」という2つだけとなった。
最近になって変わった部分であるため、他のサイトには大卒の必要があると掲載されていたりするが、高卒だろうが中卒だろうが可能か不可能かだけでいえば可能となった。
求人条件
冒頭に、大学へと進学する理由のひとつに「良い企業への就職の足がかり」と書いた。
これは皮肉や揶揄でもなんでもなく、実際に求人の条件には非常によくみられる。
企業に入るために必須となるわけではないが、大学を卒業しているというだけで応募条件をみたすことのできる求人は大幅に増える。
リクナビNext
マイナビ
doda
重複や厳密に条件となっていない場合等もあると思われるが、適当なサイトで検索してみた結果だけでも2千件もの求人が大卒がキーワードとして用いられていた。
これはなにも就活、転職サイトにかかわらず、ハローワークなどでも大卒が条件となっている求人は山ほどある。
また「大卒以上」とわけられている場合が多いため、よく言われる「進路の幅が狭まる」、「所得や出世スピードに差が生まれる」というのは決して間違った認識ではないといえる。
編集後記
本記事作成にあたり、大学進学が必須となる資格や職業を調べてみたが、必ずしも必要とならない資格や職業の方が多く、逆に驚くこととなった。
恥ずかしいことに、わたし自身は教員となるために大学へと進学したが、教員の道は諦めてしまった。進学したことに後悔はないが、もし何か別の道を模索しようとした際に、年齢以外に弾かれることがないという現状を知れたことは自分にとっても良い学びだったと思う。
番外編に掲載した求人の項からもわかるように「なんとなく大学に進学しない」よりも、「なんとなくでも大学に進学する」ほうがあとから取れる行動の幅は大きく広がる。
どうしても進学したいのに金銭面等で諦めざるを得ないような境遇でなければ、積極的に大人が勧めるのもさもありなん、といったところだろう。
そこでよく学び、よき友人と出会い、満喫できるかどうかはまた別ではあるが、ひ○ゆきのいうように「大学進学はコスパが良い」といった認識も大きくハズレていないように思える。本来は勉強するために進学する場所に思えるが、今の日本の状況を考えると、大卒ではないが勉学で結果を残した、実績がある、といった状況以上に大卒というメリットが大きすぎるのだ。
これはこれで問題のようにも思えるが(個人的には努力が正当に評価される世の中であってほしい)、現状を把握した上で、やはり大学進学はおすすめしたい。
最後に、話は変わるが最近ではAOや推薦の割合が増え、試験での門が狭まってきていると聞く。
これに関しては個人的に非常に問題だと考えており、どんな境遇でも勉強して結果さえ残せれば学問の道が開けるという部分を妨げるべきではないと思う。
どれだけ田舎に住んで学習の機会が少なかろうが、都会の富裕層が英会話や海外旅行をして経験に差がつこうが、試験で好成績を収めれば大学に入れるというのは、すべてが良いとは言わないが、一つの救いでもあると思う。
https://twitter.com/NEOKASUMI_No1/status/1562093166677086208?s=20&t=O5T4PybLoLpleqAIKpvA2g
別記事にて掘り下げていきたい。