【文系】大学卒業が推奨される資格、試験
前回の記事では大学進学が必須となる資格についてまとめたが、当初想定していたよりもあまり数をとりあげることができなかった。
思っていた以上に、代わりとなる試験などで補填できるようになっていることがわかったため、大学進学時によく勧められる資格が、どういった側面で推奨されているのかをまとめた記事をつくることとした。
大学に進学し、学位を受けたり単位を取得することで、前段階となる試験を受ける必要がなくなったり、年数のかかる実務経験が要求されなくなったりとメリットがある資格や試験をいくつかまとめていく。
なお、あまりにも数が多いため、概ね文系に分類されるものからまとめた。理系に関しては別記事にてまとめていく。
司法試験
裁判官、検察官、弁護士を志望する人に必要な学識や応用能力が備わっているかを判定するための国家試験。
法科大学院(ロースクール)を修了することで受験資格を得ることができるため、まずは法科大学院へと進む必要があるが、その入学試験を受ける条件として原則大学卒業が求められる。飛び級を認める制度(大学に三年以上在籍し、優秀な成績を修めた人)もあるが、基本的には大卒が条件と言っていいだろう。
法科大学院ガイド 出願書類の準備
大卒必須としなかったのは、別の方法として司法試験予備試験に合格することでも司法試験の受験資格を得ることが出来るからだ。
発表されている合格率が3%程度と非常に狭き門ではあるが、決して不可能というわけではない。
優秀な人の場合、法科大学院に通っている最中に司法試験予備試験に合格して抜けていくこともあるそうなので、数字だけでは一概にどちらが良いということも出来ない。しかし、こういった場合も踏まえると、多くの人が大学に入ってから法曹を目指していると考えていいだろう。
税理士試験
税理士試験は、税理士となるのに必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定することを目的として行われる試験。
下記の通り、大学で単位を取得したものが受験資格を得ることができるが、日本商工会議所主催簿記検定試験1級合格者などに関しても受験資格を得ることができる。
国税庁 税理士試験受験資格
大学に進むメリットとして、受験資格を得られるだけでなく、学位取得による試験科目免除制度が利用できるということも大きいだろう。修士、博士学位において、内容によっては会計学や税法といった試験科目が免除される。
改正税理士法の「学位による試験科目免除」制度のQ&Aフローチャート
税理士になるのが明確な目標としてある場合には、大学進学し、学習・研究を進めて知識を得ながら、優遇を受けることが出来る。
国家公務員試験各種
国家公務員とは憲法により「全体の奉仕者」と規定され、大きく国家公務員と地方公務員に分けられる。 更に特別職と一般職とに大別され、各府省で働く一般の行政官や、外交官、税務職員など、ほとんどは一般職の国家公務員に分類される。
試験はどれも大卒、高卒程度といった区分でわかれており、読んで字のごとく大卒程度の試験を受けるには大学卒業を経ていなければならない。
こういった試験のうち、総合職は大卒が必須となるが、専門職の一部では受験資格に人事院が認める者、等と大卒以外の条件を掲載している場合がある。
国税専門官採用試験
法務省専門職員(人間科学)採用試験 保護観察官
財務専門官採用試験
食品衛生監視員採用試験
労働基準監督官採用試験
航空管制官採用試験
海上保安官採用試験
いずれも人事院 試験情報ページより抜粋
短大、あるいは高専卒業により受験資格を得られるところもあるが、「人事院が~と同等の資格があると認める者」等の詳細は、下記のような内容となっている。
あくまで上記は一例となっており、これらを読み解くためには学校教育法も確認する必要があるため、興味があれば学校教育法施行規則などで一次情報を抑えるようにするべきだろう。
ざっと読んでみた限りでは、専修学校の課程を経ているか、外国で同等の課程を修めているか、といったものであるため、大卒程度の学習が必要であることに変わりはないだろう。
別の資格のように予備試験に受かれば良い、といったものではなく、養成施設等で課程を修めるといった道が無いものが大半であるので、国家公務員職を望んでいる場合には大学へ進学するのが最も明快な条件の達成方法だろう。
学芸員
学芸員とは、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究、その他これに関連する事業を行う「博物館法」に定められた博物館におかれる専門的職員を指す。
学芸員になるには大学・短大で単位を履修するか、文部科学省で行う資格認定に合格する必要がある。
資格認定においては、まず筆記試験(必須科目8科目及び選択科目2科目)を行い合格する必要がある。
合格できれば筆記試験合格証書が授与され、合格後1年間学芸員補の職を経験することで、文部科学大臣に認定される。
試験に合格して経験を積むことができれば資格が取得できるため大卒は必須ではないと言えるが、大学で単位を取得することができれば試験なしに学芸員としての資格を有することが出来る。
司書
都道府県や市町村の公共図書館等で図書館資料の選択、発注及び受け入れから、分類、目録作成、貸出業務、読書案内などを行う専門的職員が司書と呼ばれる。
司書・司書補になるための資格は司書講習を受講するか、大学・短大で単位を履修する必要がある。
司書補に関しては、高校あるいは中学卒業の後に司書補講習を受けることで資格を得ることができるため、大学へ進学していなくても、講習を受ければ資格を得ることができ、司書への道も開ける。
司書補として三年の勤務経験と司書講習が必要となるため時間がかかるが、大学に進めるのであれば、単位を取得して一足とびに司書となれるため少なくとも時間的には有利であるといえるだろう。
編集後記
大学に通っていた頃によく話題に上がっている職業なども多かったため、大学が必須ではないとはじめて知ったものも多かった。
しかし、大半は大学に通わない分の経験や知識を別に求められるため、通っている間に取得することができれば最も効率が良いと言えるだろう。専攻している学問とは別に単位を取る必要性がでてくるわけだが、大学には勉強をしにいくわけで、就職や資格に有利なものならばなおさら検討に値するだろう。
大学に入ると、シラバスとよばれる要項をもとに受ける授業を自分で決めることになるのだが、大学受験で勉強は終わりと思わず、将来が湧きそうな職業に関するものも抑えておくのが良いのではないだろうか。