受験勉強はいつからはじめるべきか?
「いつやるか、今でしょ」という勉強の格言ともいうべき言葉が一昔前に少し流行ったが、こと受験に関して「いつやるか」と聞かれたら、「今でしょ」としか言いようがない。
何事もそうだが、遅きに失するよりは早く始めたほうが良い。
何事も始めるのに手遅れになることなどそうそうないが、早いに越したことはないのだ。
もちろん、高校入学した瞬間から受験生のような生活をしろとは言わない。
部活も、学校行事も、課外活動も、青春も、思い出づくりも思う存分してほしい。
しかし事実として、今までだらけていた人が、いきなり毎日10時間勉強する生活を始められるかと言うと、そんな簡単にスイッチを入れることは出来ない。
飛行機が十分な滑走時間と距離がないと飛び上がることができないように、大学受験においても徐々に準備をしていくことが大切だ。緩やかにスタートしながら、だんだん速度を上げていって、最後にドーンと飛び上がる、というイメージでいるのがベストだろう。
この記事では、大まかに高校3年間編と高校3年生編に分けて、理想的な大学受験勉強のスケジュール感を紹介したい。
あくまで理想を述べるものであり、このスケジュール通りじゃないと絶対にいけない、などということは全くない。ただし、少し早く人生を過ごし、受験を経験したわたしからの、反省を踏まえたアドバイスだと思ってもらえると嬉しい限りだ。
計画的な受験スケジュールの設定
早速だが、下記は高校3年間のざっくりした受験スケジュールのイメージ図である。改めていうが、あくまでこれは一つの例であり、これを参考にしながら各自でカスタマイズしていってほしい。
この図を念頭においた上で、学年ごとの注意点を書いていこう。
思っている以上に重要な高校1年生
高校1年生のときから大学受験を意識しろ、という記事はあまり無いかもしれないが、高校1年生の時間の使い方は非常に大事である。
勉強習慣の基礎を作る
1日のルーティンにはじまり、部活がある日、部活がない日、週末の過ごし方といった風に、その後の3年間の基礎となる生活習慣がある程度固まってくるからだ。
進路も志望校も学部も決まってない高1の段階から何をすれば良いんだ、と思うかもしれないが、そういった場合は、まず英国数の勉強に注力して勉強習慣を作ってほしい。
理由は簡単で、国立私立文系理系問わず、受験を受けようと思うとこの3科目のうち最低2科目は必ず課されるからだ。何をしたら良いかわからずとも、ひとまずこの3科目だけは勉強しておくと良い。3科目も力を入れられない、という人でも、せめて英語だけ、最悪英単語だけでもコツコツとやっておくべきだろう。
受験における科目別の重要性については別の記事でまとめているのでそちらも参考にしてほしい。
苦手科目をつくらない
また、高1における最大の注意点として、苦手科目をつくらないこと、というのが挙げられる。
高校に入って学習のレベルが上がると、どうしても上手く学習が進められない科目も出てくるだろうが、この時点で苦手科目を作ってしまうと、ずっとその苦手意識がつきまとうことになる。
したがって、特に前述した3科目については極力苦手科目にしないように注意してほしい。
例えば数学アレルギーになってしまったら、それだけで理系に行くことも、文系で優位に立つこともできなくなってしまう。
あるいは英単語の勉強をサボってしまったら、受験シーズンに入ってから高1レベルの英単語の総復習から始めなくてはならない。
高3の受験シーズンに入ってから「時間が足りない」と感じてしまうのは、往々にして高1~高2の内容の復習を一から始めなくてはならないからだ。
高3になってから復習を始めているようでは、当然ながら演習や試験対策といった勉強の時間が足りなくなる。だからこそ、1年時に習ったことはその年のうちに理解することが重要となる。
当たり前だが学習した内容を全て覚えておくことは不可能なので、受験シーズンに入ってから復習することにはなるが、全く理解してないことを一から復習するのと、一度理解したことを改めて思い出すために復習することでは必要な時間も労力も大きく異なる。
そういった意味でも、苦手意識を持たずに勉強を続けることが重要になる。
逆に、どれか一つでも得意科目にできるようであれば儲けものだ。
なんとなくでも志望校を決めておく
半年ほどかけて高校生活に慣れ、勉強習慣を確立していったら、次は志望校選びをしよう。
この段階では、なんとなくの将来のビジョン(職業や夢などから逆算すると良い)、とそのビジョンに向かうための進路を意識する、とった感じで構わない。具体的な大学や文理選択まではいかずともいいだろう。
医者になりたいなら医学部に行くしかないし、弁護士になりたいなら法学部に進むのが圧倒的に有利となる、とった知識を仕入れておくことで、段々と具体的な進路が固まってくる。
そういったキャリア直結型の学部じゃないにしても「MARCHレベルには行きたい」とか「最低でも早慶上理」「できれば旧帝国大学」「東京に出たいから都心の大学」等など、大まかにどのレベル帯の大学を目指すのまで決めることができれば、その後の方針を決めやすくなる。
このサイトでは国公立大学であれば旧帝国大学、私立であればMARCH以上を目指しているような学生を主な対象として運営しているので、参考になるようであればそれ以上に嬉しいことはない。
高2を制するものは受験を受験を制する
大学受験において高校3年間のどの学年が一番重要かと聞かれたら、わたしは高校2年生だと答える。
学校生活にも慣れてきて、部活でも中心的な役割を果たし、生活が充実してくるこの時期は、最も多くの人が勉強面ではダレてしまう時期とも言えるからだ。
進学を希望する学生であれば、高3になれば誰でも受験モードに入る。
そのため、ダレやすい高校2年生の時間を無駄にしなかった人こそが、受験で圧倒的に優位に立つことができるのだ。
最優先で決めるべきは文理選択と受験科目
高2の時間を有効に使って受験の準備を進めていくには、なるべく早い段階で文理選択と受験科目を決定することが大切だ。
多くの高校が2年進学時に文理選択を行なうことになるため、進学する以上確実に決まる部分ではある。しかし、文理は将来に影響する重要な分岐点である。得手不得手で適当に決めるのではなく、あらかじめ自分なりの根拠を持って選択するようにしておきたい。
さらに、受験科目の絞り込みはより重要だ。
注力する科目が定まっていないと、どう準備をすればいいのかわからなくなる。受験戦争を勝ち抜くためには、余計な科目にリソースを割く余裕はないのだ。
学校の先生には怒られてしまうかもしれないが、一般選抜でいくと決めている受験生であれば、極端な話、受験科目だけ勉強すれば良い。
「幅広い教養が~」とか、「無駄な中にこそ有益な~」とか色々言われることもあるかもしれないが、まずは受験に受からなくてはお話にならない。幅広い教養も、無駄かもしれないモノの中から有益なものを見出すのも、志望校に入ってから思う存分学び、探せば良い。
高校時代は3年間しかない。
浪人したとしてもせいぜい1浪か2浪だろう。
限られた中で最大のパフォーマンスを発揮するには選択と集中が重要だ。
高2時点であれば国立を視野に残しておく
上述した内容に加え、ここで一点追加のアドバイスであるが、よほど強い理由や信念でもって「国立には行かない」「この大学以外には進学しない」と心に決めている人でない限り、国公立受験を視野に入れた受験科目を選択しておくのが良い。
高2時点で私立大学のみを想定した学習に絞ってしまうと、もしその後国公立に方向転換しようとした場合、非常に難しくなってしまうからだ。
3教科特化型の人がいきなり5教科7科目の勉強をする、というのはかなり難しい。最低でも共通テストレベルの力量をつけなければならないため、いきなりやれと言ってもそれは無理な話だろう。
そういった意味で、少なくとも高校2年生までは国公立も射程圏内から外さないほうが良い。
後から受験科目を減らすことはできても、後から増やすのは命取りだ。
受験校、受験学部を具体的に考え始める
受験科目を絞り込んだということは、したがって受験校、受験学部を絞り込めるようになった、とも言える。高1のときにイメージした将来のビジョンを基に、最良な志望校選択をしよう。
まず受験校を選択する上で重要なポイントとなるのが、偏差値の高い大学がすべてにおいて優れているというわけではない、ということだ。
研究室、教授レベルでみれば他の大学のほうが設備が充実している、著名な教授がいる、他にはない学部がある、そこでしか学べないことがある、など大学ごとにいくらでも特徴づけができる。各大学が様々なプログラムや制度が提供しているため、オープンキャンパスやパンフレット、大学のホームページなどをみながら、自分がやってみたいこと、興味のあることなど、知的好奇心を満たしてくれるような進路選びをしよう。
大学の入りやすさ(偏差値)だけで進路選択をしてしまうと、入学後に「こんなはずじゃなかった」「やりたいことと違う」といったギャップから、早々に無気力な大学生になってしまう。そうならないためにも、志望校・学部選びは非常に重要なのだ。
志望校、志望学部、受験科目が決まったら、あとは可及的速やかに受験科目の範囲を一通り網羅して、もう新しく学ぶ単元や範囲がない状態にもっていこう。
理想は高2のうちに受験科目においては全範囲カバーすることだが、学習ペースが早すぎて内容の理解が疎かになっては本末転倒なので、高3のゴールデン・ウィーク前後くらいまでを目処に網羅するように意識しておくのがベストといえよう。
受験の天王山、高校3年生はとにかく問題演習
高校3年生においては、上記の高校3年生編の図も参照しながら読み進めてほしい。
前述の通り、高3の早い時期には受験科目の出題範囲は網羅した状態に持っていくのがベストである。通っている高校の指導ペースが遅い場合なども考えられるため、自分でスケジュールを立てて、着実に受験準備をしていこう。
受験においては、学校の言うことを盲目的に信じることは罠である。
何事も自分で選んで進めていくことが肝要だ。
高3夏休みは得意を伸ばして苦手を潰していく
受験科目の出題範囲を一通り網羅できたら、夏休み中は得意科目の強化と苦手教科の克服を徹底しよう。特に苦手克服は非常に重要だ。
致命的に苦手な科目が一つでもあれば、国立私立を問わず不利になってしまう。
夏休みという時間をしっかりとれるタイミングで、苦手科目を受験者平均点程度は得点を取れるレベルにまで押し上げよう。
また、夏休みは過去問演習を開始するタイミングとしても悪くない。
志望校からワンランク下の大学群の赤本を実際に解いてみるのが良いだろう。ワンランク下とはいえこの段階ではそうそう高得点が取れるわけでもないだろうが、合格圏内の65%~75%が取れれば概ね順調に進められていると判断できる。
夏休み明けから秋ごろ、そして直前期
夏休み明けからは、志望大学の受験しない学部や同レベル帯で受験予定のない大学など、志望校に近いレベルの過去問を解く時間を作っていってほしい。
秋頃の過ごし方や過去問の効果的な解き方についてはそれぞれ別の記事で詳述したのでぜひご参照してもらいたい。
12月以降の直前期はもう細かいことは言うまい。
体調管理を第一にしながら、最後の総仕上げと共通テストの準備、細かい箇所の復習など、細々とした対応に追われることになるだろう。
直前期は一日10時間勉強するような時期ではもうない。
入試日と休息日のバランスを取りながら、体調管理を徹底するべきだ。
勉強時間は長くても4~6時間くらいにおさえ、入試日にベストなパフォーマンスを出せるような精神的体力的調整を最優先しよう。
理想的な受験スケジュール
ここまで、大まかに理想的な受験スケジュールを考えてみた。
中には、思うように過去問や模試の点数が伸びずにスランプになったり、数学の苦手意識が抜けきれずに私立専願に切り替えたり、などという状況に陥ることもあるだろう。
ただ、受験を乗り越えてきた身として、勉強の絶対量と勉強時間から考えて、こういった流れを辿れれば難関大学にも十分挑戦できるレベルの実力がつくだろう、という想定でいる。(もちろん毎日まじめに長時間の勉強をしていれば、の話であるが。)
極端に偏差値が低い状態から受験対策をはじめる場合、部活を終えてから本格的に受験勉強を開始した場合、あるいは海外の大学を受ける場合など、ここに書いたスケジュールでは到底対応できない場合なども大いに有り得る。
そういった場合でも、自身でしっかりと将来を見据え、スケジュールを立て、進捗を確認しながら愚直に学習を進める、という点においては、必要な努力はそう変わらない。
それぞれのベストな学習方法、スケジュールをもって、大学合格というゴールを目指していこう。
編集後記
高校時代のわたしはとにかく不勉強であった。
高校受験が割とうまくいったせいで、自分の実力を過大評価し、完全に大学受験を舐めていたのだ。また、最初の頃はあまり学校に馴染めなかったというのもあって、部活動も幽霊部員、バイトも数ヶ月で辞めるなど、全くもって堕落した高校生であった。
この記事では高校2年時の受験における重要性について、偉そうに講釈を垂れているが、わたし自身は高校2年生の時に何をしていたかというと、学校はほぼ毎朝遅刻し、放課後には神保町のゲームセンターでスロットを打っていた。
当時はそれがかっこいいなんて思っていたし、学校の先生の言うことを聞かないちょっとやんちゃなキャラ、みたいなのに憧れていた。まあ大体の高校2年の男子はそうだと思うが(笑)
そんなわけで、授業なんてサボればいいじゃん、先生の話なんか無視無視、みたいなスタンスだったくせに、受験対策、スケジュールなどは律儀に学校の方針に従っていた。というか自分で考えようとしなかった。
前も話したが、我らが日比谷高校は(少なくとも当時は)高3まで文理を分けない、全生徒が全科目学ぶ、という正気の沙汰ではないあたおかカリキュラムで、大学受験の勉強は高校3年生になってから、みたいなスタイルであった。
勉強しないくせに、大事な受験対策は学校の方針に沿っていたので、もちろん高3から全力疾走しても、着実に走り続けてきた人に適うはずがない。結局現役時代は満足な結果を出すことができず、その後も明治理工中退、フリーターなど紆余曲折を経てなんとか1浪で慶應経済に引っかかった。
おっさんになった今でも思う。もっと高校時代ちゃんと勉強していたら、国立受かっただろうな~と。この後悔は一生消えないだろう。
まあ、高校時代散々アホなことをいっぱいしたおかげで、大学の講義はサボらず真面目に受けて、パチスロにハマることもなく、留学もして、海外大学院にも行けたと思うので、人生長く見れば悪くはなかったとは思う、今日このごろである。
いい風に言えば、人生どの段階でもきちんと勉強すれば良い、ということだ。
本記事のように高1から頑張って勉強しなくても、それなりの大学にはいけるということだけは覚えておいてほしい。